スタートアップと大企業の付き合い方

私はコンサルタントという立場の元、クライアントとして一部上場の企業を7年ほど見てきました。また、自分の中小企業を15年ほど経営してきました。さらに、ここ1年はスタートアップ企業の創業期を歩んでいます。過去色々な企業を「見た」り「入り込んだ」り「経営した」りした私は、各会社・各業界には、それぞれの立場があり、それぞれの言い分がある!と痛感しています。「大企業を中心とした既存の企業」と「スタートアップ」が提携し一緒に仕事をする場合に起こりえるストレスとそれを埋める考え方の提案をしてみたいと思います。

スタートアップからみた大企業

スタートアップ業界に入って、1年弱。多くの業界の人達に会ってきました。スタートアップやそれを支援してくれる人達。製造業を中心とした中小企業や大企業の人達(私の仕事上、製造業が多いのです)などです。その中でも、大企業の人達はスタートアップから見てうらやましい反面、我々スタートアップと圧倒的に違った側面があり、そのおかげでなかなか共同作業できないのでは?と思う面があります。スタートアップが大企業に対して思う事は、以下のような感じです

  1. 意思決定が遅い
  2. 多くの資料を作成しようとする
  3. リスクを取ってくれない
  4. なかなか意見の修正をしてくれないor困難(時間がかかる)
  5. 自社のリソースを使って進めたがり、自由に選ぶ発想がない

スタートアップ側から見た一方的な意見ではあります。大企業になぜこうなのか?それは、「大企業(既存の一般的な企業)から見たスタートアップ」を考えてみれば、より理解しやすくなるでしょう。

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大企業から見たスタートアップ

大企業。資本主義の元で生まれた、多くの人間(社員など)を抱える共同体です。確かに最初(創業時)は今で言う「ベンチャー企業」だったのかもしれませんが、それは過去の事。大企業の目的は、「身内の人間(社員など)を食わせつつ、社会貢献を考えながら、いかに利益を生むか!」「生んだ利益を使って、この繰り返しを行う」という事だと思っています。これらの企業は、スタートアップと比較して、こう思っているでしょう。

 あ.組織である我々には決済(多くの同意)が必要

 い.長中期的な展望をもとに事業展開をする必要がある

 う.他の部署や外部との付き合いが数多くあり、それらの兼ね合いは無視できない

 え.最初からある程度完成されたプロダクトを出す必要がある

 お.社内で決められたルールがある

通常の企業は少なからずこれらの縛りがあるはずです。スタートアップ側はこれにとらわれておらず、このことがイノベーションを生み出しているのかもしれません。それぞれがお互いを理解し、溝を超えて連携することができれば、双方が足りない部分を補完し、相乗効果によってさらなる高みに行くことができるのではないでしょうか?

お互いに理解し合えるには

スタートアップと大企業の言い分を整理してみましょう。

  1.意思決定が遅い(スタートアップ)

  2.多くの資料を作成しようとする(スタートアップ)

  あ.組織である我々には決済(多くの同意)が必要(大企業)

双方からの言い分が、相対になっています。スタートアップは最初は創業者+αで運営を進めるため、ある程度決済できる人物が交渉に当たりますが、大企業だとそうもいきません。決済の仕組み上、多くの資料を作成しなければいけない場合もあるでしょう。

双方で相手を理解した上で、歩み寄る姿勢が必要なのです。スタートアップは決済に必要なための資料を作成しやすい提案をしたり、前もって伝えておく。大企業側はある程度進む方向を予測しておき、スタートアップと会う前に、ある程度の決済をしておき、権限を持って話し合いに望むといった努力をしてみるのはどうでしょうか?スタートアップ側に多くの資料を作るためのリソースはないのですから。

  3. リスクを取ってくれない(スタートアップ)

  い.長中期的な展望をもとに事業展開をする必要がある(大企業)

  う.他の部署や外部との付き合いが数多くあり、それらの兼ね合いは無視できない(大企業)

この言い分も相対になっています。スタートアップはリスクを考えず前に進む場合が多いですが、それは大企業を含めた一般的な企業には絶対に通用しません。大企業はいかにリスクを取らずに事業を行うかが大事であり、さらに法規や慣習などを突破(突き破る)する事業は、避けます。大企業にとっては、スタートアップと付き合う部署しかないわけではなく、これら法規や習慣を大事にしなければいけない部署もあるわけです。リスクを背負う事により、他の部署との組織バランスを崩す可能性もあるわけです。

スタートアップにとって、大企業と連携を図るには、「この事業はいかにリスクを取らずに進める事ができるか?」や「リスクを取らなければいけない状態になった時のプランB」などを説明する必要があります。大企業側としては、通常の事業提携ではなく、相手がスタートアップである事を認識すると共に、上司を含めた周りの人達に理解を求め、長期的な視野とともに、投資的な発想とそれを行うことによる付随効果(スタートアップ側はおそらく認識していない)を考慮した上で、提携を考える必要があるのです。

  4. なかなか意見の修正をしてくれないor困難(時間がかかる)(スタートアップ)

  え.最初からある程度完成されたプロダクトを出す必要がある(大企業)

主にプロダクト(ソフト/ハードウェア)を作る際に起こる双方の言い分だと思われます。スタートアップ側の意見は「ある程度の完成品(80%程度)を先にリリースし、ユーザーにβテスト(ユーザーには言えませんが)をしてもらいながらアップデートを繰り返して完全な完成品を目指す」といった、アメリカ思考の考え方をすることが多く、さらにその考え方がユーザーに許される環境にあるためだと思われます。こういう考え方になる原因としては、スタートアップにとっては人的/ビジネスリソースが足らず、さらに市場のニーズを素早く取り込みたい(悪くいうと、開発時にマーケティングができていないという事ですが)という考えからでしょう。大企業から見たら、その考え方は理解できないはずです。リリースするプロダクトは使い方やマニュアルこそアップデートの余地を残すことは許されるとはいえ、プロダクト自体は完全完成品に近い(少なくとも99%を目指して作られた)ものを出す必要があると考えているはずです。これは大企業の現在まで培われたプライドや信用力を落とさないための考え方であり、ユーザからの期待もあるからでしょう。

では2社が提携する場合、この2つの考え方の違いをどう吸収すれば良いか?それはプロダクトの種類(画期的なものなのか?今までの量産品の延長なのか?ハードなのか?ソフトなのか?)と、表に出る法人(責任を取るのがどっちの法人なのか?)によってある程度決まってくるのではないでしょうか。そしてさらに一番大事なのは、ユーザーに許されるのはどのレベルなのかを考えることだと思います。大事なのはユーザーなのですから。

  5. 自社のリソースを使って進めたがり、自由に選ぶ発想がない(スタートアップ)

  お.社内で決められたルールがある(大企業)

スタートアップは、自分のリソースをあまり持っていません。人的/ビジネスリソースが必要なときは、必要な時に必要なものを補充していきます。他とのしがらみもありません。ソフトウェアのツールなどは、資金の都合、オープンソースのツールを使うことがほとんどです。一方大企業は、すでに多くのリソースを持っています。人的リソースですら、他の部署から回してくることも可能なわけです(新しく雇って企業カラーを教育するよりも他の部署から連れてくる方が早いと考えることもあるでしょう)。ソフトウェアツールに至っては、当然自社で決められたツールがあり、オープンソースのツールはセキュリティーの問題をクリアしなければ使うことすら許されないでしょう。

これらの相違はなかなか埋めることができないと思います。お互いの考え方を尊重し、提携した場合のチーム内で吸収していかなければいけません。

少しでも「既存大企業とスタートアップの繋がり」がうまくいくよう、それぞれの言い分や、それぞれから見た相手の見え方を私なりにまとめてみました。双方に言い分や理由があります。できれば相手の言い分を理解した上で付き合って行くと、その先に解決策があるはずです。


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