スタートアップ業界のススメ 第一回

今、ちまたに溢れる、「ベンチャー」という言葉

前回の「ブログ始めました」で宣言した通り、「スタートアップ」の話をしたいと思います。さっそくですが、「スタートアップ企業」という言葉、世界中で流行り言葉のようにもてはやされ使われています。ただし、日本では「スタートアップ企業」より「ベンチャー企業」という言葉の方がよく聞きます。ベンチャー企業って聞いて、何を思い描きますか?若い人達が、デニムなど自由な服装で、マックをもって、職場に遊び道具並べて、自由な発想で、、、私にはこんなイメージでした。テレビや新聞を見ると、コンピューター業界だけではなく、金融業界(フィンテック)、宇宙業界や酪農業や漁業でさえも「ベンチャー企業」に注目が!!なんて言われています。ただ、日本で言っている「ベンチャー企業」と、世界的にはやっている「スタートアップ企業」、マスコミが報道する内容等を聞いていると、言葉の定義に違いがあるように感じます。日本でよく言われている「ベンチャー企業」は文献やネットで調べると、「比較的(5年以内)若い会社で、新しいビジネス領域を手掛ける会社」と明示されています。すなわち日本では、これから説明しますが世界的定義の「スタートアップ企業」と、「新しい領域の設立まもない通常ビジネスの企業」を足して、ベンチャー企業と言っているようです。では、この「スタートアップ企業」と「通常ビジネスの企業」の違いとは?ここ数ヶ月でこの2つを転身した私が、わかりやすく解説してみます。

通常の企業の経営・資金繰り

私自身、15年以上会社を経営してきました。日本の中にいる限り、経営者や会社自体に求められるものは単純で、売上と利益になります(雇用創出・地域貢献等、社会的意義はおいといて)。この2つを上げる(事業拡大の)ため、足りないリソース(人材や設備等)を増やす事になり、現状の資産を使ったり、資金的に足りない場合には金融機関に融資をお願いしたり、最近では補助金を申請したりして資金調達をします。具体的には以下のようになります。(あえて創業から書きます)

① (創業)

② 問題定義をしながらアイデアを固める

③ アイデアを実現するビジネスモデル(新規事業や既存事業拡大)を確立させる

④ 資金調達(金融機関などによる融資、補助金や補助制度を使う場合もあり

⑤ プロダクトの完成度を高めつつ、事業拡大させながらキャッシュフローを安定化させる

⑥ ④〜⑤を1サイクルとしながら繰り返す

⑤で「キャッシュフロー」を安定化させたのちに経営者はさらなる事業拡大に挑み、足りないリソースを増やすために④に戻ります。この④〜⑤のサイクルを繰り返しつつ事業拡大していくのですが、この構造の短所というべき問題が生じる場合があります。それは、経営者が描く将来像がいかに良くとも、その会社の「現在が悪い」状態であれば融資を受ける事ができないうことです。すなわち、外的要因の景気・災害の影響や、単純な計画の失敗などで現在の経営状態が悪くなってしまった場合、融資が受ける事ができなくなり、こういった状態に落ち込んでいる中小企業は多いと思います。こうなってしまうと、私の会社も一時そうでしたが、必要なリソースへの投資ができなくなるため、コストカットのみの改革を行いながら、現状が良くなるまで耐え続けるという構図なります。将来の展望は大切であり、特に上場の会社の場合は株価に影響する事が多いです。しかし、金融機関融資をメインに資金繰りを行う一般的な企業に至っては、将来像以上に現在の財務状況が大切になるのです。経営者は、企業の大きさ(上場企業は、株式をうまく使って、資金調達をする事が可能ですが)や創業の古さに関わらず、長期的な将来像のために短期的な見通しを犠牲にする事は出来ません。この「融資中心の資金繰り」「短期的な財務諸表の安定化がまず大事」を考えながら、事業拡大を目指す会社が「通常の企業」なのです。

「スタートアップ」の違いと長所

では「スタートアップ」は、前記の通常の企業とはどう違うのでしょうか。まず、字そのままの解釈でいくと、「スタート(起業)」してしばらくの低空飛行or地中飛行の後、大きく業績や会社価値を「アップ」させる事が可能なビジネスや企業です。まずは、スタートアップの一般的な流れを見ましょう。

① 創業

② 問題定義をしながらアイデアを固める

③ 問題を解決しながらアイデアを実現できるビジネスモデルを確立させる

④ 資金調達(投資家などによる投資、融資ではない

⑤ 最初のうちは黒字化を気にせず、プロダクトの完成度を高めつつ、事業拡大

⑥ 必要な時に④投資を増大していき、さらに事業拡大

⑦ 上場させる、もしくは大企業への売却(EXIT)

通常の企業もスタートアップも、創業時に、当面の運用資金を含めて、ある程度のキャッシュが必要になるのは同じです(資本金とするかは別問題)。②〜③の行程も、具体的な方法論の違いはあるとしても、大きな意味としては、通常企業もスタートアップも同じです(スタートアップはここの行程に、将来ビジネスを短時間で大きく伸ばすために、通常企業よりも時間をかける等の違いはあります)。⑤以降が通常の企業と違ってきます。通常企業のように融資を受けてキャッシュフローを作るわけではなく、株式と引き換えに投資を受けるのです。一般的なスタートアップに対する投資家(ベンチャーキャピタル)は、日々の投資に対する金利や元金返済を気にするのではなく、会社価値が上がることによるキャピタルゲインを期待しているため、投資先のスタートアップの現在の財務諸表よりも、将来に向けた企業価値増大への方向性を気にします。すなわち、スタートアップは、長期的にビジネスを見ることが可能であり、少なくとも最初のうちは財務諸表を黒字化することにとらわれる必要がありません。その後、上場や大企業への売却を持って一つの区切りとなります。

一つ、わかりやすい例をあげましょう。有名なAmazon社(元はスタートアップです)は、つい最近まで、財務諸表的には赤字でした。単年度の利益以上の金額を全て設備投資に回していたためです。世界の最先端設備を入れることにより、企業価値は上がり(株価も上がり)、さらには競合に対しての優位性すら上がります。このため、投資家たちからは不満どころか、さらなる投資を引き出す事が可能になります。もしAmazon社が通常の金融機関融資メインの企業だとどうでしょうか?長年の赤字+設備投資過多。メインバンクがどう思うのか?存続すら危ぶまれる気がします。

20642032_1414252101973491_1694024858_o.jpg

「スタートアップ」も良い所ばかりではない

では、これから会社を起こす場合、スタートアップになればいいのか?そうとも言い切れません。スタートアップにも、難しい点や短所があります。たとえば、スタートアップに投資してくれるベンチャーキャピタルは、キャピタルゲインを期待をしているので、中長期的に会社価値が急激に上がる会社以外には投資してくれません。スタートアップの言葉通りといった上記でも述べましたが、スタートしてアップするようなビジネスモデルでないと、投資を引き出す事ができず、スタートアップとして成り立ちません。また投資を受ける代わりに株式を放出するわけですから、本来のオーナー中小企業と違い、創業者ですらわずかな%の株しか持っていない状況になります(投資家以外にも、社員などにストックオプション等を出すのでなおさらです)。よって、ある程度資金を集めたあとでも、会社価値がなかなか上がらない場合、創業者+社長(CEO)ですらその身分は安泰ではなく、解雇されるリスクを持っています。

「スタートアップ」ってどうなの?成功するの?

スタートアップの起業時に、その起業家がどのような思いを持っているのでしょうか?多くの場合は、世の中の不便や不満を抱えている問題に対して、なんらかの解決をもたらすようなモデルを考え、その解決策を具体的にするために起業する事が多いでしょう。具体的で根本的な解決策であればあるほど、そのスタートアップは成功する可能性を秘めています。法律的な問題や時期の問題はありますが、私は「解決すべき問題が大きく、その市場がある程度の大きさを持っている」のであれば、そのスタートアップの事業は成功すると考えています。ただし注意すべき事は、そのスタートアップの事業モデルが成功しても、それは最初にやりはじめた起業家とは限らないという事です。その事業自体に「大きくなる可能性」があったとしても、「時期」、「メンバーの能力」、「事業のやり方」や「運」(人との繋がりが大事な起業時には特に大事かも?)といった要素で、その事業をはじめた起業家よりも、別の人や団体がその事業を成功させることがあるわけです。すなわち、最初にやり始めた起業家よりも、2番目、3番目に始めた起業家が成功したり、思い描いたアイデアが時代を先取りしすぎて数年後に違う形で花開いたり、といった事は日常茶飯事に起こっています。逆に上に書いた事項さえ味方につけてしまえば、早く始めた起業家がその成功を手にする可能性は高いわけです。良い問題点を探し、それに対して良い解決策を思い描き、スタートアップが取るべき最低限の姿勢を貫きつつ、うまくメンバーを集め、粘り強く事業を進めていけば、そのスタートアップ事業は少なくともその市場規模にあった成功を収めるのではないのでしょうか。

今「スタートアップ」はアツい

 長所や短所、既存ビジネスとの差や成功するのか?等々を述べてきました。どちらにせよ、長期的な視野に立ちながら問題を解決できるビジネスが比較的多い「スタートアップ」は、これからも確実に起業数が増え、大きな会社として成長する会社も出てくると思います。当然、その創業者や初期に投資した人は、莫大なリターンも得る事も可能です。まだ世界と比べるとスタートアップの数が少ない日本ではありますが、起業はどんどんしやすくなってきますし、投資元のベンチャーキャピタルも増加傾向です。みなさん、本来のスタートアップにもう少し目を向けてみて、積極的に関わってみましょう。そこには、投資機会や起業者のネットワーク等、様々な刺激が待っているのです。


中嶋 信彰のアップデートをFacebookページで受け取れます!!